現在、あらゆる分野で注目されているのが、UV(紫外線放射)を利用した殺菌装置、すなわち、紫外線ライトです。
紫外線の殺菌作用は、1901年にドイツの物理学者であるハーマン・ストレーベルによって発見されました。
その後、1936年アメリカのGE社によって紫外線殺菌ランプが開発され、1950年代頃から日本でも
- 医用
- 産業用
などで普及するようになりました。
最近では、一般家庭でも使われるようになってきた紫外線ライトですが、いったいどのようなものなのでしょうか?
そこで今回は、
- 紫外線の概要
- 紫外線ライトの殺菌する仕組み
- 紫外線殺菌のメリット
- 紫外線殺菌のデメリット
- 紫外線ライトの注意点
などについて、くわしく紹介します。
紫外線とは
太陽の光には、
- 可視光線(目に見える光)
- 赤外線(目に見えない光)
- 紫外線(目に見えない光)
があり、紫外線とは、太陽から放射されている電磁波の1種です。
紫外線は、10nmから400nmの範囲のもので、波長が短くなるほどエネルギーがつよくなります。
波長のながさによってさまざまな
- 性質
- 作用
があるのでみていきましょう。
[box class=”box31″ title=”波長による紫外線の種類”]
[box class=”box26″ title=”100nmから230nmの波長”]
空気中の酸素と反応し、
- オゾン・・・塩素の数倍の酸化力があり、ほとんどの物質を劣化させる
- イオン
をつくる
[/box]
[box class=”box26″ title=”260nm前後の波長”]
殺菌線と呼ばれ、
- 細菌
- ウイルスのDNA
をこわす
[/box]
[box class=”box26″ title=”200nmから300nmの紫外線”]
- 皮膚が赤くなる(やけどのようになる)
- しみ・そばかす
などの原因になる
[/box]
[box class=”box26″ title=”300nm前後の紫外線”]
- 健康線
- ドルノ線
とよばれ、
- 骨の形成に必要なビタミンDをつくる
- 血行や新陳代謝の促進
などの作用があり、健康にかかせないもの
[/box]
[/box]
紫外線ライトが殺菌する仕組み
紫外線を細菌にあてると、細菌細胞内のDNAに作用して、
- 水和現象・・・水和とは、さまざまな化学物質に水が付加すること
- ダイマー形成・・・ダイマー形成とは、2個の分子が会合した状態で機能する状態
- 分解
などの光化学反応をひきおこします。
その結果、菌類が死滅すると考えられているのです。
とくに、260nm付近の波長は、直射日光の波長350nmの1600倍も殺菌効果があり、
- ウイルス
- カビ
などすべての微生物を短時間で殺菌することができます。
基本、300nm以下の波長域の紫外線であれば殺菌効果がありますが、DNAに吸収されやすい波長のピークは、
- 265nm
- 185nm
の2ヶ所となっています。
185nmの紫外線は、DNAへの吸収率はよいものの、
- 空気中の酸素
- 照射ランプに使用される石英ガラス
にも吸収されるため、使用されていません。
よって、260nm前後が、最も殺菌作用が強い波長となるのです。
そこで、ピークである260nmに近い254nmの紫外線を発光する「低圧水銀UVランプ」が主に使用されています。
また最近では、260nmのUV LEDがSET社によって開発され、DNAを直撃する光線として注目されています。
紫外線殺菌のメリット
紫外線殺菌のメリットは、薬剤での殺菌とはちがい、
[box class=”box29″ title=”紫外線殺菌のメリット”]
- 菌に耐抗性をつくらない
DNAを破壊された細菌は生き残れないため、増殖できず、耐抗性がうまれない
- 残留しない
化学物質などの残留物がなく、安心安全
- 対象物への影響がない
飲料水・食品原料水などの用途にも適している
- 管理が簡単
メンテナンスはほとんど不要なので、自動運転に適している
[/box]
という点です。
ほかにも、紫外線線殺菌は、短時間で簡単に菌をとりのぞけられるという点でもすぐれています。
たとえば、大腸菌なら15wのランプを使用した場合、約1分で9割の殺菌ができるのです。
そのため、
- 食品工場
- 水産業
- エレクトロニクス産業
- 医療分野
などの幅広い分野で注目を集めています。
また、厚生労働相は、
- たまごの表面についたサルモネラ菌
- 理美容室でのカミソリ
に紫外線殺菌を義務づけています。
紫外線殺菌のデメリット
紫外線殺菌のデメリットは、
[alert title=”注意”]
- 対象が表面にかぎられる
- 光をさえぎるものがあると効果がない
- 殺菌後に細胞の死骸がのこる
※死骸によって水がにごるため、光媒体・プラズマ・フィルタなどで除去する必要がある - 水銀ランプが主流のため、環境負荷がおおきい
※SET社によって開発されたLED型が環境に負荷をあたえない光源として注目されている - 殺菌効果が残留しない
※照射後にあたらしく付着した菌に対する殺菌効果はないので、再度照射する必要がある
[/alert]
という点です。
紫外線ライトの注意点
太陽光にふくまれる紫外線の量は、約1000マイクロワット/cm2です。
そして、紫外線ライトの紫外線量は、50から900マイクロワット/cm2と、太陽光に匹敵する紫外線量を照射しています。
紫外線ランプの光が直接、目にあたると、
[box class=”box27″ title=” “]
- 目が痛くなる
- 涙がとまらなくなる
[/box]
などの症状がでることがあります。
また、紫外線ランプが皮膚にあたると、
[box class=”box27″ title=” “]
- 日焼け
- 炎症
[/box]
の原因になります。
そのため、紫外線ランプを使用するときは、
[alert title=”注意”]
- 防護めがねをつける
- 肉眼で点灯中のライトをみない
- ライトが皮膚にあたらないよう保護する
[/alert]
などの注意が必要です。
まとめ
一般用にも販売され始めた紫外線ライトですが、なかには
[alert title=”注意”]
- 殺菌性能が十分に検証されていない
- 完成度のひくい製品が流通している
[/alert]
といった例もあるようです。
紫外線ライトを一般の人が利用する場合、
[box class=”box29″ title=”ポイント”]
- 注意事項をしっかり確認する
- 専門家のアドバイスをうける
- メーカーの技術文書をしっかり確認する
[/box]
などが大事だといえます。
また、紫外線ライトには、
- 細菌
- ウイルス
に対する殺菌効果があるいっぽう、人間の
- 目
- 皮膚
に障害をあたえたり、有機物でおおわれた什器製品の表面を劣化させることもあります。
そのため業務用の厨房などでは、
- 夜間、無人にになるときにだけ点灯する
- 厨房機器がステンレスなど金属製で劣化をうける可能性がない
などのきびしい制約があるのです。
今後も紫外線ライトは、さまざまな未知のウイルスなどに活用されると思います。
そのためにも、紫外線ライトの
- メリット
- デメリット
- 注意点
をしっかり把握し、安心安全に使えるとよいですね。
コメント