「藤田スケール」ということばをご存じですか?
これは、竜巻などによる被害の状況から突風の強さ(風速)をはかるものです。
近ごろ日本でも、竜巻による被害がおおくなっています。
いざという時、自分の身を守るためには知識が必要です。
そこで今回は、
- 竜巻の概要
- 藤田スケールの概要
- 藤田スケールの歴史
- 藤田スケールの階級
- 改良藤田スケールとは、藤田スケールをより使いやすくしたもの
- 改良藤田スケールの階級
などについて、くわしく紹介します。
竜巻とは
竜巻とは、積乱雲にともなう強い上昇気流により発生する激しい渦まきで、それが地上ちかくにまで伸びたものです。
竜巻と台風は似ていますが、はっきりとした違いがあります。
それは、竜巻のほうが、
- 渦まきが小さい
- 移動する距離が短い
- 風がはるかに強い
- 進路が予想できない
ということです。
またたく間に、海や地上のあらゆるものを巻きあげるので、大きな被害をもたらします。
竜巻の風速は、最大で100m/秒程度とされています。
また、竜巻の寿命(継続時間)は、数分ほどです。
藤田スケールとは?
藤田スケール(EFスケール)とは、竜巻やダウンバーストなどの突風により発生した被害の状況から、風速をおおまかにはかる方法です。
竜巻などの激しい突風をもたらす現象は水平規模が小さく、既存の風速計から風速の実測値をはかることは困難なため、1971年にシカゴ大学の藤田哲也博士により考案されました。
藤田スケールの歴史
藤田スケールは、1971年、シカゴ大学教授(当時)の藤田哲也と国立暴風雨予報センター局長(当時)アレン・ピアソンによってつくられました。
しかし、藤田スケールには、比較的強いトルネード(とくにF3からF5)に対する風速の推定値が、実際の風速より極端に高く評価されてしまうという欠点がありました。
その後、改良藤田スケールがつくられ、より正確な風速の推定ができるようになりました。
藤田スケールの階級
藤田スケールには、F0からF6までの7段階があり、値が大きいほど被害・風速が大きいことを表します。
[box class=”box26″ title=”藤田スケールの階級”]
- F0:17~32m/s(約15秒間の平均)
- 煙突やアンテナなどの弱い構造物が壊れる
- F1:33~49m/s(約10秒間の平均)
- 屋根瓦がとび、ガラスがわれる
- 走っている自動車が横風をうけると、道から吹き落とされる
- F2:50~69m/s(約7秒間の平均)
- 住家の屋根がはぎとられ、よわい非住家は倒壊する
- 大木が倒れたり、ねじ切られる
- 自動車が道から吹きとばされ、汽車が脱線することがある
- F3:70~92m/s(約5秒間の平均)
- 住家が倒壊する
- 非住家はバラバラになって飛散し、鉄骨づくりでもつぶれる
- 汽車は転覆し、自動車はもちあげられとばされる
- F4:93~116m/s(約4秒間の平均)
- 住家がバラバラになって飛散し、非住家は跡形なく吹きとばされてしまう
- 列車が吹きとばされ、自動車は何十メートルも空中飛行する
- 1トン以上ある物体が降ってきて、危険このうえもない
- F5:117~142m/s(約3秒間の平均)
- 住家は跡形もなく吹きとばされる
- 自動車、列車などがもちあげられて飛行し、とんでもないところまでとばされる
- 数トンもある物体がどこからともなく降ってくる
[/box]
ちなみに日本では、今のところF4以上の竜巻は観測されていません。
改良藤田スケールとは?
改良藤田スケール(JEFスケール)とは、日本の気象庁が米国のEFスケールをもとに、日本の環境にあわせて藤田スケールを改良したものです。
そもそも藤田スケールはアメリカで考案されたもので、
[box class=”box27″ title=”藤田スケールの課題”]
- 日本の建築物などの被害に対応していないこと
- 評定に用いることのできる被害の指標が9種類と限られていること
- 幅をもったおおまかな風速しか評定できないこと
[/box]
などの課題がありました。
そこで日本の環境にあわせ改良することで、正確に竜巻などの突風の風速を評定することができるようになったのです。
改良藤田スケールの階級
突風による被害の状況を、
- 被害指標(なにが)
- 被害度(どうなった)
にあてはめることによって、藤田スケールより風速をしぼりこんで評定することができるようになりました。
評定に用いることができる被害指標が、藤田スケールでは、
[box class=”box26″ title=”藤田スケールの被害指標”]
- 住家
- 非住家
- ビニールハウス
- 煙突
- アンテナ
- 自動車
- 列車
- 数トンの物体
- 樹木
[/box]
の9種類に限られていましたが、改良藤田スケールでは、
[box class=”box29″ title=” “]
- 住家や自動車などが種別ごとに細かくわけられた
- 自動販売機や墓石などが加えられた
[/box]
ことにより、30種類に増加したのです。
※風速範囲は3秒平均とする
[box class=”box26″ title=”改良藤田スケール”]
- JEF0:25~38m/s
- 飛散物により窓ガラスが損壊する
- 物置が移動したり、横転する
- 自動販売機が横転する
- JEF1:39~52m/s
- 木造の住宅において、比較的広い範囲の屋根ふき材が浮きあがったり、はく離する
- 軽自動車やコンパクトカーが横転する
- 走行中の鉄道車両が転覆する
- コンクリートブロック塀(鉄筋あり)が壊れる
- JEF2:53~66m/s
- 木造の住宅において、上部構造の変形にともない壁が損傷する
- ワンボックスカーや大型自動車が横転する
- 鉄筋コンクリート製の電柱が折損する
- 墓石の棹石が転倒したり、ずれたりする
- JEF3:67~80m/s
- 木造の住宅において、上部構造が著しく変形したり、倒壊する
- アスファルトがはく離、飛散する
- JEF4:81~94m/s
- 工場や倉庫など大規模な屋根がはく離したり、脱落する
- JEF5:95m/s~
- 鉄骨住宅が変形したり、倒壊する
[/box]
まとめ
藤田スケールは、実測する手段のない竜巻という自然現象にランクをつけたもので、できるまでに大変な苦労があったようです。
とくに規模のおおきい竜巻は、
- 発生頻度が少ない
- 人口の少ない地域でおこることが多い
ことから、研究に必要な情報がなかなか集まらなかったそうです。
そこで、ラジオを通じて情報提供をよびかけることで、写真や目撃情報が集まり、内容が体系化していったのです。
藤田スケールは、その後何度も改良され、現在も世界中で活用されされています。
私たち自身も知識をもち、もしもに備えることができるよう準備しておくことが大切だといえるでしょう。
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