風は四季折々の風があり、日本ならではの四季を楽しむことのできる要素ともいえるでしょう。
自然を楽しむことができる風には様々な呼び名があるだけでなく、地域独特の風の名称があるのをご存知でしょうか?
その地域ならではの風の名称を知ることにより、自然を楽しむだけでなく、様々な地域に対して親しみを覚えると思います。
地域独特の風にはどのようなものがあるのかを説明していきますね。
地域独特の風
地域独特の風は地方風と呼ばれ、特定の地域にのみ吹く風となります。
地域的な意味合いを取って、局地風や局所風と呼ばれることもあります。
地球上において、地域ごとにそれぞれ違った風土や気候となるので、地域によって風は異なる特徴を持っています。
地方風は地域の風土ならではの風となることが多く、穏やかなものよりも、強く吹き付けるような風に名付けられることが多いといえるでしょう。
地域独特の風の名称にはどのような地域のものがあるのでしょうか。
飛鳥風(あすかかぜ)
明日香風とも書き、奈良県の明日香地方に吹き渡る風となります。
盆地である奈良県明日香地方を包み込むように吹き渡る力強い風だといえるでしょう。
伊香保風(いかほかぜ)
群馬県榛名山から吹き下ろす風であり、榛名颪(はるなおろし)ともいわれます。
上州のからっ風となり、万葉集の東歌でも謳われています。
いせち
伊勢風を意味する言葉であり、伊勢湾の方向から吹いてくる暴風となります。
祖風(おやかぜ)
青森県東津軽郡において、陸側から海側に吹き付ける風であり、下北郡では風向き関係なく最も強い風となります。
清川だし(きよかわだし)
山形県の庄内平野辺りに吹く強風であり、梅雨時に多く発生するのが特徴です。日本三大悪風ともいわれています。
広戸風(ひろとかぜ)
台風の通過に伴い、岡山県の那岐山付近に吹き荒れる北寄りの暴風です。
夜間になるにつれて、次第に風が強まっていくのが特徴です。
佐保風(さほかぜ)
佐保は平城京の大宮人が住んでいた地域であり、現在の奈良市北部となります。
奈良市北部の辺りを吹いていた風を佐保風といいます。
関風(せきかぜ)
関所、関路を吹く風となります。
関所は旅をする者にとって動揺する場でもあり、自信の心情が表れる場だといえるでしょう。
関風は実際の風だけではなく、旅をする者の不安や緊張、安堵感といった心の中を吹いていく風でもあります。
オロマップ
北海道の日高山脈南麗のあたりに吹き荒れる強風であり、春に吹く冬の季節風の名残となります。
風向きは様々ですが、主な風向きは西寄りとなります。
まつぼり風
阿蘇外輪山の西側峡谷部で吹く、10m/sを超えるほどの非常に強い東風であり、麦の減収要因にもなる風です。
いなさ
東日本、関東で海から吹く南東あるいは南西の強風であり、台風の前兆ともいわれています。
別名として、辰巳の風(たつみのかぜ)と呼ばれることもあります。
伊吹颪(いぶきおろし)
濃尾平野から渥美半島にかけての地域で、冬季に北西の方角から吹き下ろす伊吹山の風です。
冬季以外にも風は吹きますが、冬季限定で伊吹颪という呼び名となります。
高西風(たかにしかぜ)
山陰・九州地方の船乗りや農民の間で用いられてきた言葉であり、山陰・九州地方で稲刈りの頃に北西から吹く強い風となります。
稲をなぎ倒し、漁船に被害を与えるので、多くの人に恐れられている風だといえます。
星の入東風(ほしのいりこち)
中国地方で陰暦10月頃に吹く北東風であり、昴が良く見える頃に吹きやすい風となります。
天候不順になりやすく、中国地方の船頭の間ではよく使われていた言葉となります。
しゆたらべ
喜界島において、梅雨になる前に吹く湿気が多い南風となります。
筑波東北風(つくばならい)
筑波山の方角から吹いてくる北東風であり、つくばおろしともいわれます。
比良颪(ひらおろし)
滋賀県の比良山東麗に吹く局地風であり、本格的な春の訪れを予感させる風となります。
強い比良颪が吹く時は、比良山の頂上付近に風枕といわれる雲が出現することが多いです。
玉風(たまかぜ)
冬の時期、北日本の日本海側で強く吹く北寄りの風となります。
海上は大シケになり、豪雪をもたらす風となります。
平野風(ひらのかぜ)
奈良県と三重県の県境にある高見山の西麗に吹き荒れる冬の強風となります。
鹿の角落とし(しかのつのおとし)
山口県で初夏から春にかけて、晴れた日中に吹く強い風となります。
青北(あおぎた)
関西で初秋から仲秋にかけて、晴れた日に吹く北風であり、サラッとして涼しいのが特徴です。
あなじ
西日本で、船の往来を妨げるほどの冬に吹く強い北西風となります。
まとめ
風は地域の風土に合わせるかのように様々な呼び名があり、地域の人に密着したものだといえるでしょう。
風は私たちに「涼」を与えるだけでなく、自然の厳しさを教えてくれるものであり、自然の厳しさを連想させるような名称の風も多く存在します。
地域独特の風の名称を知ることにより、その地域の風土や気候を知ることにも繋がるでしょう。
参考文献
高橋 順子(文) 佐藤 秀明(写真) 「風の名前」 株式会社小学館 2002年5月20日発行
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