「寒九の雨」という言葉をご存じでしょうか?
「寒九」とは、寒に入って9日目の1月13日頃を指します。
旧暦では、1月5日頃からを「小寒」と呼び、冬の寒さが1番厳しい「寒の入り」となります。
そして、その日から9日目が「寒九」となるのです。
ということは、「寒九の雨」=「寒に入って9日目に降る雨」となります。
ではなぜ、寒の入りから9日目なのでしょうか。
そこで今回は、
- 概要
- 由来
- 降る時期
- 類語
- 例文
などについて、詳しく紹介します。
「寒九の雨(かんくのあめ)」とは?
「寒九の雨」とは、寒の入りから9日目の1月13日頃に降る雨のことです。
この日に雨が降ると、その年は豊作になるという言い伝えがあります。
青森県八戸地方では、真冬の雨を「かんぐの雨」と呼び、
- 来るべき年が暖かいことのしるし
- 豊作が予想されることのしるし
として特に喜ばれるそうです。
また、寒の時期、日本列島は西高東低の冬型の気圧配置となり、太平洋側は晴天続きでほとんど雨が降りません。
関東平野などにとって、この時期に降る雨は「慈雨(じう)」とされ、「寒の内の雨は親の乳房」という言い伝えもあるそうです。
※「慈雨」とは、日照り続きの時に降る、恵みの雨のこと
「寒九の雨」の由来
「寒九の雨」の由来は、「寒九の水」からきているようです。
小寒から9日目の寒九の日は、水が1番澄んでいるとされています。
これは、寒さと乾燥で雑菌の繁殖が抑えられるため、質がよく腐りにくいからです。
そのため、寒九の水は薬を飲むための水として重宝されてきました。
また、水自体が薬になるとも信じられていたようです。
そして、寒九の日に降る雨も、雑菌が少なく澄み切っているとして、農作物にとっても、
- 恵みの雨
- 豊作をもたらす雨
として、昔から特別視されてきたことから「寒九の雨」と呼ばれるようになったとされています。
他には、寒の時期の雨が雪となって山に降り積もり、春になると凍っていた寒九の雨が、豊富な水となって田畑に流れ出し、豊作となるという説もあります。
「寒九の雨」の降る時期
「寒九の雨」は、寒の入り(1月5日頃)から9日目(1月13日頃)に降る雨のことを指します。
「寒の入り」とは、厳しい寒さが始まることを表し、その日を「小寒(1月5日頃)」と呼びます。
そして、1月20日頃を「大寒」、2月3日頃を「立春」と呼び、「寒の明け」=「春の始まり」を迎えます。
この「寒の入り」から「寒の明け」までの約30日間を「寒」と言い、1年で最も寒い期間とされているのです。
「寒九の雨」の類語
「寒九の雨」と同じように「恵みの雨」の意味を持つ言葉を紹介します。
[box class=”box30″ title=”恵みの雨の意味を持つ言葉”]
- 慈雨(じう):草木を潤す恵みの雨のこと
- 喜雨(きう):長い日照りの後に降る喜びの雨のこと
- 翠雨(すいう):青葉に降り注ぐ初夏の恵みの雨のこと
- 甘雨(かんう):草木にやわらかく降り注ぎ、その成長を助ける雨のこと
- 穀雨(こくう):穀物の成長を促す雨のこと
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また、「寒九」の他にも、寒さを表現した言葉があるので紹介します。
[box class=”box30″ title=”寒さを表現した言葉”]
- 寒四郎(かんしろう):寒の入りから4日目のことで、この日が晴天だと豊作、雨や雪だと凶作になると言われています
- 寒土用(かんどよう):立春前の18日間のことで、寒さの厳しい時期
- 寒太郎(かんたろう):寒の入り(小寒)を擬人化した言葉
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「寒九の雨」の例文
「寒九の雨」は、冬の季語として俳句などに用いられてきました。
「寒九の雨」を使った俳句や甚句をいくつか紹介します。
[box class=”box30″ title=”「寒九の雨」の俳句・甚句”]
- 岩手県気仙地方に伝わる気仙甚句:
気仙よいとこ寒九の雨に赤い椿の花が咲く 作者:菊池多記翁 - 「寒九の雨」を使った俳句:
恵みなる寒九の雨の石濡らす 作者:森山のりこ - 寒の入りから立春の前日までに降る雨を表す「寒の雨」を使った俳句:
鴈騒ぐ鳥羽の田づらや寒の雨 作者:松尾芭
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まとめ
「寒九の雨」は、
- 寒の入りから9日目の1月13日頃に降る雨のこと
- 恵みの雨
- 豊作をもたらす雨
ということがわかりました。
また、「寒九の水」は、
- 小寒から9日目(寒九の日)の水が1番澄んでいるとされていた
- 薬を飲むための水として重宝されてきた
- 水自体が薬になるとも信じられていた
ということから、「寒九の雨」の由来になっていることもわかりました。
このように、昔から人々は、寒くて辛い時期の中にも「寒九の雨」のような喜びの雨があることを言葉で表現し、大切にしてきたのです。
私たちも大切に受け継がれてきた言葉を、次の世代へとつなげていきたいものですね。
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